竹内志朗資料館/テレビ編

はじめに

大阪テレビ放送で「文字を書きます。タイトルします」と言ったものの、自信があったわけではなかったのです。

それまでのスライドや映画のタイトルは、 18センチ×25センチのフリップに書いていましたが、テレビ局では、テロップと言って、5センチ×7センチくらいの所に文字や絵を描くことになりました。字の大きさが全く変わって戸惑いましたし、それからまた猛勉強です。

テレビの文字を書くことで基本があります。

テレビの世界では、ありとあらゆるスタイルの文字を書かなければなりません。相撲なら相撲文字、歌舞伎なら勘亭流で、バラエティ番組ならラフな文字と、どんな文字の書体でも、またどんな雰囲気にも変えるように要求されます。

「ここで猛勉強せんと迫いつけへん!」と気を引き締めました。そうでなければ、「番組内容に合ってない」と言われます。また上手く要求に合わさないと「お前、何やねん」と担当者からは思われます。 自分でデッサンカを磨くしかありません。

幸い、妻の父・私の義父が、プロではないのですが、時々頼まれて、上品な文字の浄瑠璃の床本を玄人並みに書いていました。それを借りてきたり、自分で新間の切り抜きを貼ってテキスト用に作った物を、再度見直して勉強しました。

※歌舞伎/浄瑠璃一歌舞伎の勘定流と浄瑠璃の勘定流は少し違います。

寄席文字の勉強は、主に東京の寄席に行って看板の写真を撮ってきたり、音の寄席文字の入った番付を吉本屋で買ったりしました。相撲文字の勉強のためには、相撲番付を買いに行きました。

大阪テレビ放送に入った頃には、明朝体やゴシック体が自在に書けるようになっていたので、ちょっと崩したラフな文字も書けるようになっていました。

楷書・行書・草書、これらも独学です。いつものように全部夜中に書いて練習しました。私にとっては特定の書道家に習っていなかったので、あらゆる字が書けるようになりました。特定の先生に書道を習つていたら、その流派からはみ出して進めなかつたように思うのです。却って、私のような環境が良かったと、今更ながらに思っています。

先ず、脚本を読みます。「このドラマなら」「この内容なら」と思ってイメージができます。タイトル文字の場合、今は2通りか4通りを、「この中から選んで下さい」と言っています。書くのは自分が納得いくまで何十枚、何百枚と書きます。

たとえば、藤田まことさん主演の『剣客商売』のタイトル文字は、池波正太郎先生の手書きの原稿用紙に書いてある高年筆の文字を参考にし、約2日間ぶっ通しで、いつものようにとことん納得できるまで、何百枚と書きました。

練習や勉強のできるテレビという場があったからこそ、幸に私のオリジナルを生み出す幅が広がったのだと思っています。

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